ロゼの空

昼の日差しがやわらぎ始め、オレンジからピンクに変わる地球の隙間が好き。
桃色に染まっていく空を見ていると、夢想の世界に入っていけるようです。
思い出すのはあの日の空。その色に浸りたくてロゼを選んでみました。

グラスに透かした空を見ていると、本棚から誰かに呼びかけられたような気がしました。
そこに目をやると、智恵子抄が私だよと言っているようでした。
「智恵子は東京に空が無いといふ」
「私が見た空はむかしなじみの綺麗な空」
「どんよりけむる地平のぼかしはうすもも色の朝のしめりだ」
「智恵子は安多々羅山の上に出ている空がほんとうの空だといふ」
ふるさとの空を想う智恵子、毎日の現実の空を感じる光太郎。
その時の状態によって、心が感じる空の色も変わってくるのですね。

いま、そらのピンクが強くなってきました。
空の色が移ろう時間にはロゼが似合います。

ロゼワインとひとくちに言っても、その味わいはもとより色合いもさまざま。
タンニンや色素の抽出方法も葡萄の種類や造り手によって変わってきます。
フランスのプロヴァンスの青い空の下で気軽に飲む冷やしたロゼとボルドーやブルゴーニュ、ロワール、ローヌで注がれるロゼ色とは少し違っています。
そのほか、スペインやアメリカもまた独特のロゼ色を持っていますね。
日本ではお花見の季節に桜色のロゼや、お祝いの時に華やかなロゼシャンパーニュが好まれているようです。
いま私が選んだのは、フランス、ローヌ地方のタヴェル ロゼ。
世界の人々が見つめる空とグラスに注がれたピンク色のコントラストを思い浮かべると、ほんのり幸せで明るい気持ちになってきます。

夕暮れだけでなく、朝焼けの空、曇りの天井、雨の日、そして漆黒の夜と月の光。
空というキャンバスは何色にでも変わっていきます。
その中にいる私は、果てしない空に帰っていた大切な人に見守られています。
ロゼのひとときに浸りましょう。
ロゼの色が変わるように時々に変わる私の心を楽しみましょう。
空のロゼが変わらないように、変わらない私の心を楽しみましょう。

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