Luciaの余韻

Lucia

久しぶりの旅先で夕方に向かう時間に散歩をしていた時のこと。
信号が変わるのを待っていると隣にいた人が耳に当てていたヘッドフォンから音楽が漏れてきた。

鬼滅の刃の遊郭編のテーマ曲である残響散歌だった。歩き出した私の歩調に合わせて残響という言葉が繰り返し浮かんだ。

しばらくすると、東京ではほとんどなくなったお寺の鐘の音が聞こえてきた。

2020年1月に行ったイタリア南部プーリア州にあるアルベロベッロの町にある美しい街並みに建てられたとんがり屋根のトゥルッリ。教会から響く心地良い鐘の音が重なった。澄んだ青い空に突き抜けるような綺麗で素直な音色が。

宿に戻ってワインを開けた。
あなたの残した音はいまでも心地よく響きます。
あなたの残してくれた味はまだ続いています。
あなたはなぜ、心に残るのですか?残ろうとするのですか?
そんな詩が浮かんでくる赤ワイン。
ワインは飲んだ瞬間もそのあとも楽しめます。

あ、余韻。音楽に響きの余韻があるように、鐘の音に余韻があるように、
そして、あなたに残り香があるように。
お寺の突き棒や教会の鐘舌が鐘と触れた時に出る音だけではなく、
そのあとを追いかける余韻こそ、じつは鐘の音のような気がします。
これはワインとみごとに重なります。

長い時間をかけて穏やかに熟成し、収穫も長期間にわたるブドウはしっかり熟し、
味わいも深いものとなります。
サンタルシアハイランズにあるピゾーニの畑で収穫される貴重なピノノワールから造られる赤ワイン。
ブラックベリー、ドライフィグやフラワー、クローヴやシナモンのスパイス、林床、紅茶など
複雑な香りがいっぱいにひろがり、ビロードのような滑らかなタンニンが長い余韻を誘います。

調べてみると少し面白い話がありました。
1982年、ゲーリーピゾーニ氏はロマネコンティが所有する畑ラターシュから枝を切り
スーツケースに入れ持ち帰り、この地に植えたラターシュクローンであるという逸話です。
今では大きい声では言えないような話ですが、微笑んでしまいます。
旅をしてきた枝が別の土地で大切なものは残しつつ、また新しい余韻を奏でる。
そんなエピソードを浮かべながら、
心に響いた鐘がずっと残る音とワインの味わいの深さや長さを重ねるひととき。
余韻には命があるんだなぁと、ゆったりとあなたのことを思うのです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次